料理教室は“食べる癒し”の場。本格茶懐石料理を気取らず教える「日本料理教室 彩楽(さら)」

「お魚を使った和食なら、彩楽(さら)さん」と、料理の先生たちの間でも魚料理に定評のある「日本料理教室 彩楽(さら)」。教室を主宰する岡村 径子(おかむら みちこ)先生が教えているのは茶懐石料理。いつもの家庭で作る和食より、かなり高級に感じる人も多いかも知れません。でもそこに通う生徒さんの中には、まるきりお魚をおろせない人や、働いていてヘトヘトになってお教室にたどり着く人も多いのだとか。岡村先生は修業時代に“食べることは癒し”と感じた経験から、ご自分の教室でも“癒される食体験”を大切にしています。

2018年01月23日更新

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岡村 径子(日本料理教室 彩楽(さら)主宰)

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築地直送の新鮮な魚を使った和食レッスン

「包丁の頭を下げないでね、肘から引くのよ。」

お出汁の香りに包まれたキッチンで、お刺身の包丁のひきかたを教えていらっしゃるのは「日本料理教室 彩楽(さら)」主宰の岡村 径子(おかむら みちこ)先生。ご自宅の大きなキッチンを開放したお教室で、茶事のおもてなしに使う食事・茶懐石料理を教えています。

このお教室では毎月魚料理をして魚をおろす実践練習をします。今日おろしている魚は天然鰤(ブリ)。岡村先生が自らレッスンの朝に築地に行って仕入れてきたそうです。だいたい1年半ほど通うと上手に魚をおろせるようになるそうです。 彩楽(さら)に来る生徒さんの中には「魚をさばけるようになりたい!」という人が多いのだそう。

この日の鰤もそうですが、お教室では料亭にも引けを取らない食材を惜しまずに使います。このお刺身に添えられたネギも一束で三千円!“高騰しちゃって…もはやネギの値段じゃないよね!?”と岡村先生は笑いながら、それでもたっぷりと使用。

食材の特徴や選び方、いいものが安く買えるお店、野菜の出来具合、海のしけ具合やそれに影響を受ける魚のお値段…岡村先生のレッスンは実演と同時に、食材探しに関するさまざまの話題を盛り込みながら進みます。

良い食材を選ぶこと、どこで手に入れるられるかを学ぶことは、すでに料理の始まりといえるのかも知れません。

良い食材を選び、活かしきる茶懐石料理

いい食材を選ぶだけでなく、それをどうやって使い切るかも学びます。身を使った後の鯛のアラはいい出汁が取れる。ブリの切り身も刺身を取った後、尻尾に近い細い部分は昆布締めにして蕪と合わせ、鰤蕪寿司(ぶりかぶらずし)に。先生のレシピは食材を活かし使い切る工夫が盛りだくさんです。

ものすごく高級な食事と考えてしまいがちな茶懐石料理ですが、基本は一汁三菜と呼ばれる、ご飯とお味噌汁、ちょっとしたおかず、という簡素なものです。茶事にいらしたお客様を自宅にあるもので“おもてなし”したのが始まりだそうです。

この日のメニューは「師走(12月)の日本料理」と題され、向付(むこうづけ)はブリのお刺身、汁ものには白味噌のお雑煮。煮物椀には鯛かぶらのみぞれ仕立て、そして焼き物、お煮しめ、強肴(しいざかな)は牛蒡の和え物、八寸(はっすん)は鰤蕪寿司と天豆蜜煮でした。

メニューからもわかるように、おかずには季節のものを使います。そして刺激物を避けます。本式の茶懐石では食事の後にお茶を楽しむため、食事が繊細な味覚・嗅覚を刺激してしまわないように強い味や香辛料の使用を避けるのだそうです。

旨味、出汁、食感を大事に。味を“締める”のは塩味ではない。

「旨味、出汁、食感を大事にして料理をすれば、調味料は少しでいい。食感、火の通しかた、濃さ薄さ。和食ではそういったことに気を使って料理をします。みんなで出汁を味見してみてください。塩味(えんみ)ではない、旨味を感じるでしょう?」

生徒さんは一人づつ、小さなスプーンを手に出汁の味見をします。食材の一つ一つが出す旨味を昆布出汁がまとめて、本当においしい。

根菜の下ごしらえの仕方、飾り切りのレッスンもしながら作ったお煮しめは、大きなお鍋に10人分以上の量があるのですが、ここに使っているお塩は小さじ1杯ぶんもないそうです。

「だいたい皆さん、調味料を使いすぎ、塩を入れすぎなんです。一口食べて美味しいと思うほどに調味料を入れてしまうと味が濃すぎて、最後まで食べると飽きてしまいます。飽きのこない味のお料理を作るコツは少しの調味料で味付けし、物足りないかな、というところを出汁の香りで補うことです。塩などの調味料が少ないぶんを昆布などの香りが助けてくれるんです。」

お出汁の味見が済み、盛り付けに入りました。茶懐石料理では盛り付ける器選びも、絵柄などから伝わる季節感を大事にしているそうです。煮物の盛り付けにも前と後ろの方向があるそうで、なんとなく茶事に使われる活花とも通じるなぁと感じます。

予約の取れない料理教室

一皿が仕上がるたび、生徒さんたちは写真を撮り始めます。自分で作った料理の写真を撮るのは、料理教室に通う楽しみの一つに違いありません。

この日のクラスには「彩楽(さら)」が六年前にオープンした当初からずっと通っているという生徒さんもおり、ここの生徒さんはどんどん増えているのよ、と教えてくれました。最近はレッスンの予約が取りづらい月も多いそうです。

予約が取れないほどの盛況はすごいですね、どうやったんですか?と聞くと、うちは生徒さんがほとんど辞めないの、と岡村先生はおっしゃいます。増えるのは少しづつでも、一度このお教室に参加すると何度もずっと通ってくる生徒さんが多いのです。現在では、のべ150人もの生徒さんを先生とアシスタントの方2名で教えているそうです。

「でも最初は近所にチラシを500枚まいて1件しか反応がなかったから、心が折れました(笑)。最初の1年ぐらいは月に3クラス×定員6名が埋まるか、埋まらないかでした。そこからAmebloを始めたり、生徒さんの口コミで徐々に広まって今に至っています。

料理を学んだのは柳原一成さんの近茶流(きんさりゅう)の正教授の方から。10年ぐらいお料理を習って、近茶流講師の資格を取りました。新宿の『柿傳(かきでん)』の料理長の方に習った時期もあります。」

どちらも茶懐石料理の名門。さすが美味しいはずです…!

「見るだけ・食べるだけ」も歓迎のわけ

彩楽(さら)ではデモンストレーションに実習を加えてレッスンが進みます。ホームページにはこのような但し書きが。

実習はちょっと、でも料理を食べてみたいとお考えの方、じっくり作り方を見て覚えたいという方でも気軽にご参加いただけます。

 

彩楽(さら)では料理を食べたり、見るだけでも歓迎なのだそうです。普通は料理教室といえば、材料を切ったり洗ったりから始めて何時間もキッチンに立って頑張るものというイメージがありますが…?

「ここで楽しみたいな、美味しいご飯が食べたいな、と思う人に来てもらいたいと思っています。くたびれてここに来て『昨日まで食欲がなくてご飯が食べれなかったけど、ここに来たら美味しく食べれました!』って言うひとは多いんです。そういうひとはお稽古に来て一日座っているだけでもいい。最後に出てきたご飯を食べて『今日は美味しかった、ごちそうさま!』って言って帰ればいいんだと思っています。鯛をおろせるようになるだけが料理教室ではないと思います。」

岡村先生の「見るだけ、食べるだけ歓迎」の姿勢は自分が料理を習った先生に影響を受けたと言います。岡村先生自身もご親族の看病をしていた時期があり、明け方までの看病でへとへとに疲れている、でも料理は習いたい、そんなジレンマに陥ったことがあるそうです。師匠である和食の先生はその時に『いいわよ、今日はずっと座ってなさい、座って食べていきなさい』と言ってくださったそう。その時の気持ちが料理教室を主宰する立場になっても変わらずに生きているのです。

生徒さんに美味しく食べてもらいたい、楽しい気持ちで帰ってもらいたい、その姿勢は他にも。生徒さんが苦手な食材はきちんと「差し替え」てくださるそうです。「好き嫌いはダメ!」とか「食べられないものは残してね」ではなく「楽しく美味しく食べられる食材に替える」のだそうです。生徒150名全員の苦手食材を岡村先生はみな頭に入れてその人のためだけに食材を逐一変えているのです。

料理教室を主宰する喜び、そして大変さ

料理教室を主宰していて、意外と気を遣うのが「メンバー組み」だそうです。初心者から中級、上級者までバランスよくメンバーが揃っていると、自発的にお魚をおろしてくれる人がいたり、それとなくリードしてくれてレッスンが進めやすいそうです。この他に料理教室を運営するうえで大変なことはあるのでしょうか?

「たしかに、ドタキャンなどで食材が余ったりすると料理教室側は大変です。お教室によってはきちんと支払いをしてもらえるように決済システムなどを検討するのもありかも知れないですね。でも、うちは予約時でのお支払いはお願いしていません。『今日は行きたくないけど、もうお金払っちゃったし…』という気持ちになって欲しくないんです。料理をしたい、美味しいものを食べたいと思ってここに来て欲しい。うちはそういう考え方です。」

お稽古を通しての夢をお聞きしました。

ピンと一本筋の通った岡村先生の主宰する「日本料理教室 彩楽(さら)」。これからの夢をお伺いしました。

「せっかく生徒さんも増えてきたので、来年は“お稽古茶事”という茶事をやりたいと思っています。本当のお茶会みたいな会場できちんとみんなで座って、順番どおりに茶懐石料理を出してお茶まで楽しむのです。生徒さんの中にはお茶の先生もいらっしゃるので、そういった方々に協力してもらってやりたいなぁと思っています。」

今後は茶懐石の料理を学ぶのにくわえてお茶事も体験できそうですね!岡村先生のお教室は美味しいお料理だけでなく、温かい癒しとお茶の精神が「食」から学べるお教室と言えそうです。

(ライター:小林晶子)

お教室情報

  • ホームページはこちら
  • お申し込みはこちら
  • デモンストレーション+実習形式でのお稽古となっております。実習はちょっと、でも料理を食べてみたいとお考えの方、じっくり作り方を見て覚えたいという方でも気軽にご参加いただけます。
  • お席をご用意できる日が少なく大変申し訳ございません。キャンセル待ちも承っています。希望日をお選びのうえ、お申込みフォーム備考欄に「キャンセル待ち希望」とお書きください。
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