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料理とコミュニケーションで“人とつながる”料理教室「Sorisso(ソリッソ)」

クッキング&コミュニケーションサロン「Sorisso(ソリッソ)」は恵比寿にある、人気の料理教室。料理をする人口がどんどん減っている、料理教室が成り立たなくなっていると言われている中、Sorissoでは毎日のように、昼・午後・夜と3コマのクラスが催されています。代表の光永正樹(みつなが まさき)さんは30歳のときにSorissoを立ち上げた元トップセールスマン。「人が好き」と断言する光永さんはお教室運営にも“コミュニケーション力”と“経営力”をプラスしています。経営的な視点をプラスした料理教室運営とはどのようなものかお伺いしました。

2017年12月27日更新

光永 正樹(株式会社LOHAS PROJECT代表取締役)

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「外から調理風景が見える」お料理教室

「Sorisso(ソリッソ)」は恵比寿駅徒歩8分にあるクッキングサロン。一生を通してずっと食べる、ごく普通の家庭料理を、どうしたらもっと美味しく、素敵なおうちごはんに出来るか。そのためのコツやワザを教えてくれます。

料理教室の調理場はたいてい建物の奥にあり、道を歩いている人がふと調理風景を目にすることはありません。しかし「Sorisso」の外観はガラス張りで、調理風景が道行く人にも身近に見えます。思わず “あ、ここで何してるんだろう!?なんだか楽しそうじゃない?”と覗き込んでしまいそう。

このオープンキッチンの路面サロンは、オープンから9年経っても、合理的な造りに新しさを感じます。立ち上げの当初から、この形を思い描きながら物件を探し、動線を意識して設計をしたそうです。

月間生徒数・延べ800人。驚くべき高回転率を実現

「Sorisso」はこの一か所のクッキングサロン(定員12人)で月間生徒数・延べ800人という驚くべき回転率の高さを実現しています。

代表の光永正樹(みつなが まさき)さんは、料理教室の一日の運営というのは飲食店に近い、とおっしゃいます。料理教室も飲食店のランチ営業とディナー営業のように、昼夜2回開催するのが一般的なのだそうですが、Sorissoでは、昼・夕方・夜の時間帯で1日3回転で開催しています。下の写真はサロンコーディネーターの中村先生。得意料理はお魚さばき・イチ押しメニューは“なめろう”や“お造り”だそうです。

「このサロンで料理教室のサービスを受けて頂くには、まずは会員になって頂きます。会員カードというのをお渡しするのですが、カードをお渡しして、一度は料理教室に足を運んでくださったかたは、今まで全部で1万4千人いらっしゃいます。」

会員数なんと1万4千人…!?「街の料理教室」として想像していたより、はるかに多い会員数です。しかも、そのうち1万3千人の会員さんとはまだメルマガなどで“つながっている”そうです。ここまで成功した秘訣はなんですか?とお伺いすると、光永さんは「う~ん」と考えて言葉を探し始めました。

「秘訣ってよく聞かれるんですけど…自分たちの強みを活かすということだと思います。基本的には家庭で作る料理ですから、世界でここでしか習えない料理、というものではないし、恵比寿はおしゃれな街ですが、他にもおしゃれな街はいろいろあるし。」

起業家か、組織人か?やりたいことをカタチにするなら、起業しかないとい思った。

光永さんが起業を志してこの「Sorisso」を立ち上げたのは、30歳の時。それ以前はメーカー勤務、大型工場やホテル向けに制御機器を設置する提案型法人営業をしていたそうです。

「お客様は法人、扱っていたのはハード機器、1件の成約で3千万~1億が動く、額の大きい製品を扱っていました。今やっている個人向けの商売の対局でしたね。提案をしてから成約までに役員稟議を通さなくてはならないし、設置工事もあるので半年はかかるような息の長い案件でした。

起業のきっかけは、サラリーマン時代のいろいろなことを通して、結局、自分の思い通りにビジネスをやるには自分が社長じゃないとできない、と痛感する出来事があったから。もし自分が社長になることを選ばないんだったら、会社組織の中で頑張る、組織が決めたことに最善を尽くす。起業か組織人として全うするか、その二択だと思ったんです。」

決め手になったのは『起業すれば想いをカタチにデキル!』という気持ちだったそうです。

「もちろん25日になると給料もらえる立場から、給与振込立場になるのは大変なことでした。責任がある。リスクとか大変な部分はもちろんありました。でも、出来ないかも・うまくいかないかも、という考えは思い浮かばなかったです。」

ネットではなくリアルを選んだ理由

最近では料理もレシピ動画の配信や、オンラインでのビジネス展開が盛んです。光永さんの世代はネット起業家も多いのに、起業するにあたり、どうしてデジタルではなくアナログの「教室に足を運んでもらう」スタイルを選んだのでしょうか?

「当社のビジネスモデルは創業時から『料理教室の店舗展開』ではなく『料理をコンテンツに、色々なカタチにアウトプットしてサービス化する』というモデルです。そのサービスの一つが、料理教室ですが、最初は資金的にも乏しかったため、ウェブサイトでのレシピ提供もしていました。」

もちろんネットを利用した事業展開は最初から視野に入っており、これからも展開していく予定だという光永さん。しかし、アナログのコミュニケーションにこだわるのには、自分の資質や考え方が大きく影響していると言います。

「どんどんインターネットが普及していますが、いろんな人と話をしている時に、ふと、ネットには長けていてもコミュニケーション能力が低くなっているのではないか?と感じることがあります。動画やオンラインで完結する方が市場としては無限かもしれませんが、自分が戦える土俵はどこだろうと思った時に、市場が大きいということよりも、自分の得意分野は営業だ、人と会うことだと思ったんです。

自分たちが経営していく・運営していくところに携わる社員がいて、携わるお客様がいて、取引先があって。人が来ると話をする。オンライン的なもので発想力豊かにユニークなサービスを考えていくところで勝つことはなかなか難しい。自分が勝てるのはどこだろう、僕は接客のほうが長けているんじゃないかと。」

お金儲けを一番に考えていたら、このビジネスはやっていません。と笑い、自分は人が好きなんです、とはっきり断言する光永さん。なるべく人と関わっていこう、という気持ちが料理教室経営の基本だと言います。

日本が「料理をしない」国になりつつあること

日本の世の中が「料理をしない世の中」になりつつある、という最近のニュースについて伺ってみました。

「良くないと思いますね。」

光永さんは顔を曇らせて料理とコミュニケーションについての想いを語り始めました。

「まず、料理は、青臭い話になりますが(笑)自分のために料理をする人は少ない気がします。こと、教室に来る生徒さんに関して言えば、高い割合で誰かのために作る、そのために習う、という方の方が多いですね。

70代の男性がうちのお教室にいらっしゃるんですが『なんで通い続けるのか』と聞くと、家族からリクエストを受けて美味しいものを作ったときにあれほど喜んでもらったことはなかった、と。他にも、急遽結婚が決まって『ヤバイ!旦那さんには美味しいものを食べさせなきゃ!』と駆け込んでくる女性とか。多くの方が“誰かのため”に習いに来ます。そういう人は足しげく通ってくれます。」

生きていくうえでの食物摂取は外食だってできますが、料理には目に見えない、栄養価ではないものがあるんじゃないでしょうか、と光永さんは続けます。

「料理は愛情、と言いますけど、作ってくれる人のエネルギー、それはたいへんなものです。電車に乗ってここまで来て、お金を払って習って、それを家で作って温かいうちに食べさせる。それをするのは、想いがないと、成り立たないんですよ。作ってもらった方も、その愛情を感じると思うんですね。それが家族というものを形成して、団らんが生まれる。子供が社会に出て必要となるものを身に付けられる。料理を作らないというのは、そういうものも、希薄になっていくということなんです。」

料理教室にだって「経常利益率」が必要

「料理を作らなくなるのは良くない、というのは僕個人としての意見です。会社のビジネスとしてみると、料理を出来ない・作らない人のマーケットが増えてきたということは、作る人の数が減っていて、料理を提供できる側に大きなチャンスがあるということです。そこに料理というコンテンツを持った立場からアプローチしていくことは今後もやっていきたいと思います。」

光永さんは料理教室経営の難しさをこう語ります。

「料理教室の経営は決して楽ではないと思います。料理家の先生達が自宅等で教室を続けているモチベーションは料理が好きだから、料理を教えたい、というような気持ちです。経済活動の営みとしてできている人はほとんどいないのではないでしょうか。自分が料理が好き・教えるのが好きというのを拠り所としてやっていると、生徒さんがいなくなるとモチベーションが消え、教えるのを止めてしまいがちです。

会社として人を雇って料理教室をやってることは意味があります。責任があって収益性を高めていかなければならない。儲かる商売でないし、大変だし、大きくしてくのも大変。でも、最終的には経済活動として成り立たないと存続出来ない。現在も経常利益率は20%超です。20%で超々優良といわれる経常利益率、今後も維持向上を図っていきたいと思っています。」

今後の展望をお伺いしました

「料理教室運営や料理イベントで培った企画運営力、発想力の積み重ねが、今や当社のソフト的経営資源のベースになっています。それらを活かし、法人クライアント様からも年間相当数のご依頼を頂いています。料理によるイベントプロモーションやチームビルディングイベント(外資系企業などでチーム力向上、エンゲージメント向上を目指すトレーニング)です。自社の経営資源である料理コンテンツを礎に、今後も色々な角度から様々な企業や個人のお客様に『料理を通して笑顔と人のつながり』を提供していきたいと思っています。

僕もユニークなアイディアや発想でネットなどを駆使したビジネスをすることも出来ると思います。でもビジネスをする上で、収益を上げて社員に還元して税金を納めて社会に還元していくことは大前提として、自分がその仕事をしていて楽しいか、気持ちがいいか。利益はとっても大切ですが、目先の利益を追わずに、拡大に利益がついてくる仕組みをもった経営が大切だと考えています。それがあってこそ、そこで働く社員の人間力向上、成長があると信じています。」

人との繋がりを一番の礎にしながら、ビジネスの仕組みを作り拡大を目指す。最終的にはそれを利益にもつなげていく。光永さんは「ビジネスとして成り立ちづらい」と言われる料理の世界で「愛情」と「利益」を両立させていくことに挑戦しています。

(写真と文:小林晶子)*本文2枚目・教室内イメージ写真除く

お教室情報・お問い合わせは

  • クッキング&コミュニケーションサロン Sorisso【ソリッソ】
  • ホームページはこちら
  • お問い合わせメール:info@sorisso.jp
  • TEL:03-5798-8828
  • FAX:03-5798-8829
  • アクセス:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-31-12 メゾンドマグノリア恵比寿1階
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