【フォトグラファー座談会】フォトグラファーという仕事。教えること学ぶこと。

「誰かに教えること」「誰かに教わること」どちらも言葉で表すとごく簡単な行動に聞こえます。しかし、義務教育や必須教科などの「常識として習うモノ」ではなく、「自らすすんで教えたい・教わりたい」という意志を持った「教えや学び」には、さまざまなプロセス・想い・志が存在すると思います。「憧れのあの人のようになりたい」「あの職業に就きたい」「技術を世の中に広めたい」「生活や子育てに生かしたい」…もしかしたら、もっとドラマチックな背景があったりするかもしれません。

2017年08月16日更新

アート・デザイン

星野 尚彦(フォトグラファー)

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今回、第一線で活躍する4名のフォトグラファーにお集まりいただきました。写真を通して「伝える」というプロセスを無数に踏まれてきたベテランの方々です。

独自の世界観を表現することに秀でた写真家たちに、テーマ「フォトグラファーという仕事の魅力」「教えること・学ぶこと」、そして職業への思いや理想の講師についてなど、ざっくばらんに語っていただきました。

星野 尚彦(フォトグラファー・シネマトグラファー・クリエイティブディレクター)
 1960年5月6日/東京生まれ
 日本大学芸術学部写真学科卒業
 サントリー宣伝部制作室入社
 サントリー退社後「ホシノ★カメラ」を設立

飯田 裕子(フォトグラファー)
 1960年/東京生まれ
 日本大学芸術学部写真学科卒業
 公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
 国内外でヒトと自然のつながりをテーマに撮影、
 飛行機機内誌などで、多くの旅のカバーストーリーを手がけている。
 ライフワークテーマ「オセアニアの島々」

堀内 僚太郎(フォトグラファー)
 1969年/東京生まれ
 大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業
 スタジオエビス勤務後、1997年よりフリーランスとして活動をスタート
 広告・エディトリアルなど幅広く撮影

石田 美菜子(フォトグラファー)
 東京生まれ
 日本大学芸術学部写真学科卒業
 公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)理事
 主に身近なシーンを独自のカメラアイで切り取る
 2001年より雑誌やテレビなどで写真を撮ることの楽しさを伝えている

なんだか学生時代の実習みたい。こんな雰囲気なのかな、お教室って

〔司会〕お集りいただいてまず、ポートレートを撮り合っていただきましたが、どんなテーマで撮影されたか?など感想をお聞かせください。

(石田さん、以下敬称略)私は星野さんを撮らせていただきました。巨匠が相手なので緊張しましたが、本当の姿を写し出せるようにと頑張りましたよ。頼り甲斐のある大黒柱的な雰囲気が写れば良いなと。巨匠なんだけど優しくておおらかな、そんなありのままの姿が描き出せたら嬉しいなって。

(星野さん、以下敬称略)僕は飯田さんを撮らせてもらったんだけど、大学の同級生だから変に緊張しちゃった。40年近くの付き合いだから、性格も雰囲気もすべてわかっているからね。それをリアルに撮りたかったんだけど、仲が良いと逆に「もっと、もっと」となってしまうから難しい。その人の人柄を描き撮るのは何年経っても難しいなって思う。今さらですが、あらためて写真の奥深さに気づいたよ(笑)。

〔司会〕人柄を描き撮るというのは、撮影の際にはみなさん思われているのですか?

(星野)そうだね、それがその人の本当の姿だから。彼女(飯田さん)は愛される人柄だから、それを一番に考えちゃって。そのことに力を入れ過ぎたら、難しく感じてしまった。初対面の人を「どんな人なのかな」とか思いつつ、こちらから引き出して撮影する方が比較的簡単なのかもしれないね。

(飯田さん、以下系省略)いやいや、撮られる方も難しかったですよ。知らなかった、こんなに難しいなんて(笑)。普段、私たちは撮る側だから、出来上がりの画像を頭の中に思い浮かべながら撮影しますよね。だけど、その被写体になる方は、その思いを受け止めなければならないから容易ではないなと。モデルさんや女優さんたちは、そのあたりがわかっているんだな、さすがプロだな、と被写体になって気づかされた感じ。

(堀内さん、以下敬称略)僕は石田さんを撮らせてもらいましたが、同じく雰囲気とイメージ、印象を大切にしました。明るく元気、それに加えてエレガントで上品な石田さん本来の姿を写せれば良いなと思いながら。とにかく笑顔が可愛らしくて素敵なので、その気持ちを写し出せていればいいなと。

(石田)嬉しい!ありがとうございます。お互いをよく知っているので、緊張はそんなにしなかったのですが、プレッシャーはちょっぴり感じましたね。でも、「あのポーズが良い」「あっち向いた方が良い」とか、アレコレ言い合いながら意見を出し合って撮り合えたのでとても楽しかった。

(飯田)私は堀内さんを撮影させていただいたのですが、堀内さんの今までの作品を見させてもらって、他にはない存在感と滲み出るような孤高なムードを感じていたので、そんな雰囲気もプラスできたらな、という気持ちで。とても素敵に撮影できたと思うので、ほんとうに楽しかったね。

(星野)そう、みんな約束の時間もオーバーしちゃうぐらい楽しんでしまいました。やっぱり写真って楽しいなすごいなって。瞬間を切り取って記録できるなんて、とても素敵な時間を過ごしているわけだし、こんなに有意義で楽しいことはないなって思ったね。

普段の撮影ではカメラマンはいつも1人だし、こんな風に他のカメラマンの撮影風景を見ることができる機会は滅多にないから、貴重な体験にもなったかな。

(飯田)ホントに、なんだか学生時代の実習みたいでしたね。「これどう?」「もう少しこうした方が良いんじゃないの?」って先生と生徒と仲間みたい(笑)。こんな雰囲気なのかな、お教室って。大人になると、こんなこと滅多にないから、楽しくてお教室にハマっちゃうのかもしれないね。

あり得ない世界に繋がる。得した気分になれるのも魅力かな

〔司会〕では、フォトグラファーという職業の魅力をあらためてお話しいただきたいと思います。

(飯田)フォトグラファーといっても、みんなそれぞれ専門としている被写体が違うよね。興味の対象も、得意とする分野も。だからそれぞれに世界があって、いろんな価値観がある。そんなところも面白いと感じるところかな。

(石田)レンズを通すと肉眼で見ているのとは違うカメラならではの表現が出来るのはおもしろいですね。写真を撮るためにどこかへ行かなくても、身近な当たり前のものもレンズを通してみるとステキなシーンになる。それにどのように気づくかが個々のカメラアイなのです。またカメラを持ったことによってなかなか見られないシーンに立ち会える役得のようなこともあります。

(堀内)それはありますね。フォトグラファーだからこそ普段はなかなか行けない場所にも行けるし、撮影を通して多くの人とも繋がる。その出会いやご縁から思いもよらなかった国で写真を撮っていたり。それは本当に素晴らしいことだし、有り難いですよね。僕は撮影行為はコミュニケーションだと思っているし、それらはすべてカメラがあるから出来ることだと思っています。

(飯田)私は風景や自然を主にしてるから、その気持ちはいつも感じてる。撮影に行くということがなければ、早朝真っ暗なうちに起きて出掛けたりしないですからね。写真を目的にすると、出会うはずのない人にも会えるし、素晴らしい自然現象を見るための行動にも繋がる。あらためてフォトグラファーって、得している気がする。

(星野)ただ写真を撮るだけじゃない何かがあるよね。僕たちが若い頃って、写ることが大変な時代だったけど、今は簡単に写るし簡単に撮れる。そんな風に、写真の立ち位置も時代で変わっているから、その時代に合わせて、同じものも違って見える気がするよ。年齢を重ねてきたからこそ見える世界だとか、思いだとか、そんなものに出会えるところも魅力かな。

(石田)写真ってその人の人生が鏡のように写りますよね。本当に不思議なんですけど、そんなところにも魅力を感じます。

(星野)同じものを撮っても、カメラや撮る人が違えば、それは全く別のものになる。一緒の写真には絶対ならないからね。昔、どこかで出会ったおじさんがカメラのことを「バテレンからくり」と呼んでて、上手いこと言うなぁと思ったもん。

(堀内)真実を鏡のように写し出すことの反対側にある、リアリティのあるファンタジーが作れることも魅力ですよね。映画やアートのように、リアルの中に想像の世界を作り出せることの面白さも感じます。光と影、明と暗、喜びと切なさ、美しさと儚さ…それら全てを詰め込んで表現したい時も、たった一枚の写真で作れてしまう。星野さんの商業写真も、そういう部分が多いですよね?

(星野)そうだね。僕の基本フィールドは広告だから、企業の意向をくみながら世に送り出す写真をつくるんだけど、これがとても楽しい。架空世界を作り出せる喜びというか、想像力をかき立てる1枚が撮れるとなんとも気持ちいいからね。

だけど、プライベートでは撮りたいものを撮りまくるよ。奥さんには「あなたは息をするように写真を撮るわね」と言われちゃってるぐらい。みんなフォトグラファーは基本フィールドがあり、またライフワークとして別のフィールドも持っている。面白いですよね。

知識や技術だけでなく、核の部分も伝えていきたい

〔司会〕まだ構想中とのことですが、一緒に教室をされる計画があると伺いました。ちょっとだけお聞かせください。

(星野)まだぜんぜん決めてないんだけど、4人の特性を生かした写真教室ができれば良いなと思っている段階だよね。それぞれの役割を決めて、クラス分けしてやっていければ良いなと。美菜子ちゃんはずっと教室の先生をしているから色々わかってるし、初心者クラスから全般をみてほしいなとか。僕はプロの人たちにポートレートの撮り方などを教えてみたいなと考えてるよ。

(石田)考えるだけで楽しそうですよね。初心者・基礎クラス頑張りますけど、私も星野さんのクラスで習いたい!ぜったい通います!(笑)。

(星野)今日のポートレート撮影を一緒にさせてもらって、プロの方に教えるクラスは堀内さんと僕の2人でやりたいと思ったよ。僕と堀内さんとでは撮り方もスタイルもぜんぜん違うから、とっても面白いクラスになると思うんだよね。他にはない、それぞれの個性が生きるような教室にしたいね。

(堀内)そうですね。他にはない写真教室、とても興味あります。よく撮影時にライティングとか光のことばかり気にする人を見ますが、実は撮影対象との関係性を作ることが重要なんだとか、それがいかに大切かだとか、そういった核の部分もお伝えできる教室になれば面白そうですよね。

プロのカメラマンでも専門外のこととか、意外に知らないことが多いと思いますし、カメラ技術だけではない現場で培ったことをぜひ伝えていきたい。そして僕自身もあらためて学ぶことができれば最高ですね。

(星野)テクニックだけでは写真はうまく写せないからね。僕は硝子を撮るのが得意で、堀内さんは金属を撮るのが得意だから、それも伝授したいよね。

(石田)長年、講師をやっていて感じるのは、カメラの知識は豊富に持っていて、機材もすごく立派なのに、上手く撮れないという人が多いこと。それをみて、写真を撮るというイメージを持つことの大切さとか、そのプロセスなどをしっかり教えてあげたいなと思っている。知識も機材も大切だけど、もっと別の部分を伝えたいな。これを基礎の段階で教えてあげたいですね。

(飯田)カメラ知識や撮影レクチャーだけでなく、アウトプットするところまでだよね。初心者からプロまで、希望に合わせてクラス分けし、幅広く教えることができるなんてとても楽しみ。私は今まで国内外の地域を写真で表現する仕事をしてきたので、カメラを持って旅する「写真旅」を教室で実践できたらと思っています。都市でも南の島でも、フィールドで写真を撮ることで新たな発見や出会いの喜びがあります。そのための事前調査も楽しみの一つで、旅先の気候風土や文化によって、準備する機材や旅道具も違ったり。そんなことを楽しみながら学ぶフィールド教室にできたらいいな、と思っています。

(星野)いいね、本当に面白そう。教えるというよりも、僕ら自身も楽しみたいと思っているんだよね。だから、自分たちが通って楽しいと思える内容を考えたいね。

大人になったら誰も教えてくれない、大切な部分を教えられる講師に

〔司会〕第一線で活躍するプロから学べるなんて、とても人気が出そうです。では、最後に理想の講師像をお聞かせください。

(堀内)テクニカルなことだけ教えれば良しという先生ではなく、先ほどもお話ししたカメラを通して他者とコミュニケーションする方法や、写真の世界だからできることを伝えることができたらいいなと。対象物に対する感謝の思いや気持ちの入れ方なども伝えたい。僕ならばそんな先生に教わりたいなと思うので。

(飯田)テクニックだけじゃダメだよね。私は外で撮ることが多いから、これまで出会った自然現象の話とか、いろいろな場面での対処方法なども教えてあげたいなと思う。自然とカメラとの関わり方、気持ち、準備、思いなども伝えたい。写真の世界の奥深さをしっかり理解してもらえるような教室が理想ですね。

私と星野さんと石田さんは同じ大学学部出身なので、先生も同じ。理想の先生と言えば、三木淳先生(※1)になるのかな?

(星野)三木先生は写真の撮り方はなにも教えてくれなかったよね。その代わり、写真家としての生き方とか、写真家たるものどうあるべきか、どう生きるべきか。そういった大切な部分を教えてくれたね。

当時はイマイチわかんなかったけど、今になってたくさんの教えが理解できてる。撮影の現場でも、何度先生の言葉を思い出したことか。そんな先生、なかなかいないだろうから僕たちも目指したいところだよね。

(飯田)写真家は、時に家族をも振り払って現場に行かなければならないこともある、ってね。先生はロバートキャパと同時代のフォトジャーナリストであったし、今とは価値観が違う部分もあるかもしれないけれど、プロの責任を教えていただいたのかと思います。

(堀内)確かに。僕も写真家とはこうあるべきだということを教えてもらった先生の言葉は、今でもよく思い返していますね。技術とか知識は自ずとついてくるけど、そういった大切なことを教えてくれる先生の言葉はいつまでもココロに刻まれますね。実は一番大切なんだけど、大人になったら誰も教えてくれない、そんな部分ですよね。

(星野)そうそう、技術は現場を踏めばついてくるからね。三木先生、締め切りは守れ、納期は逃すな。これもすごく言ってたよね。

(石田)言ってた! 誰よりも一番に現場に入れとか、スリッパを揃えろとか(笑)。

(飯田)人が嫌がることを率先してやる人間になれとか。

(星野)みんなが避けて通る道を通りなさい、嫌がることをすすんでしなさいと言える先生って、やっぱり人間力があるんだろうな。今思い返してみても有り難い教えばかりだよ。そんなこともしっかり教えてあげられる講師になれたらいいよね。

(※1)三木淳(1919—1992)/報道写真家。葉巻タバコをくわえた吉田茂総理の写真でLIFE誌の表紙を飾ったことでも有名。日本大学芸術学部教授、日本写真家協会会長、日本写真作家協会会長を歴任。日本写真界の発展と教育に多大な貢献を成した。

(取材・文/たなべりえ)

基礎講座スケジュール

【開校記念】基礎講座
 
ニコンカレッジでも教鞭を執る石田美菜子先生から学べるチャンスです。

■石田美菜子先生
はじめてカメラに触った方から写真表現に伸び悩んでる方まで、
自分のカメラや写真で表現する楽しさを分かりやすく教えてくれると定評があります♫

【料金】 ¥13,500 ※お茶付き
通常、¥15,000円のところ今回、ホシノ★カメラ教室 基礎講座開講記念に伴い、¥13,500で受講できます!

【カメラ貸し出し】
当日は、お手持ちのカメラでご参加頂けます。カメラをお持ちでない方には無料で一眼レフカメラ(Nikon 最新機種D5600)をお貸しいたします。ぜひ、この機会にNikonの最新機種をお試しください。レンタルご希望の方は事前にご連絡下さい。

【開講スケジュール】
各日程、講座内容は同じになります。


10月29日(日)
10:00〜12:00 座学
12:00〜13:00 昼休憩
13:00〜15:00 実習
15:00〜17:00 講評+懇親会
※希望者には、昼食のお弁当を用意いたします。(別料金)
※荒天の場合は、スタジオでの実習になります。


11月8日(水) 19:00〜21:00 座学
11月11日(土)
13:00〜15:00 実習
15:00〜17:00 講評+懇親会
(荒天別日振替)

【場所】
座学・講評:
スタジオバルク(予定)
東京都千代田区猿楽町2-1-14 A&Xビル地下1階
http://studiobulk.tumblr.com/
実習:御茶ノ水エリアを散歩しながら、移動します(予定)

【料金】
¥13,500(お茶付き・通常¥15,000)
【募集定員】 20名程度

【応募方法】
この記事に直接、コメントをいただくか、もしくは、こちらの一番下に「受講お申し込み」よりお問い合わせください。

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【開校記念】「自分で撮影する!家族写真」講座  その1 七五三 編

 プロのサポートを受けながら、スタジオのライティングで、お子さん、お孫さんの最高の一瞬を撮りませんか。ホシノ★カメラ教室ではプロフォトグラファーが、日頃の疑問や悩 みを解 決しながら、簡単な子どもの取り方を伝授いたします。
 
カメラの設定やライティングは、プロにお任せ!あとはシャッターを押せば、プロのよ うな写 りで、お子さん、お孫さんを撮影できるチャンスです。この機会に家族だけが引き出 せる自然な表情を撮影しちゃいましょう。今回は、シーズンに合わせて七五三の記念写真を撮 影いたしますが、七五三でなくても参加OKです!

【要項】
 マンツーマンサポート+撮影実習+プロによる家族写真撮影1カット(50分)

【開講スケジュール】
11月5日(日)11月12日(日)
①10:00-10:50 ②11:00-11:50 ③12:00-12:50 ④14:00-14:50 ⑤15:00-15:50 ⑥16:00-16:50 ※1枠1組限定

【場所】
 座学・講評:スタジオバルク(予定/東京都千代田区猿楽町2-°©‐1-°©‐14 A&Xビル地 下1階)

【料金】
 子ども1人につき32,500円(税抜・着付けは含みません)

【カメラ貸し出し】
Nikon D750 + ポートレートお勧めレンズの貸出あり(無料・要予約)

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